院から部屋にはまっすぐに帰った。
なんだか何もする気が起きなくて、制服を着たままソファに沈んだ。 
半月ぶりの自分の部屋はいつもと変わらないのに何かが足りない気がした。
ポケットから取り出した手紙は少しシワになってしまっていた。
手紙を透かすと四角い影が映る。
早く開けたいという気持ちと、開けたくないという気持ちが左右する。
手紙を開けてしまったら、まだ少しくらいは嘘なんじゃないかって思っている、往生際の悪いそんな気持ちまで自分で握りつぶしてしまうような気がして----。
「お前さ、守護聖なんかといっつも突然いなくなって、人のこと心配させるだけさせて、そのくせひょっこり帰ってきて…って今度はそうもいかないかぁ?」
コレが最後なんかじゃない。
それがあり得ないと解っていても、祈るような気持ちで封を切る。
白い封筒に、院で使っている神鳥のマークのついた便せんで、手紙を開くと、線の細い几帳面な字が並んでいた。



親愛なるロキシー

貴方に会えずに行くことをお許し下さい。
貴方からの手紙を受け取りました。大切にしようと思います。
守護聖になることで、いままでの憧れから、宇宙をはぐくむことになった
自分の運命を不思議に思います。
けれど、「宇宙は俺たちの夢」だと、いつか貴方と誓ったあの気持ちは
宇宙を見るたび忘れないでしょう。
ロキシー、最後に、いつも貴方がささやいてくれていたことを、
私が貴方にどうしても言えなかった言葉を。
何故、もっときちんと貴方に伝えておかなかったのかと今になって思うのです。
いつも私の側にいて下さってありがとうございました。
私は貴方のことが、とても好きでした。

最愛の貴方へ        
                  エルンスト



「こんなの…お前の口から聞かないと意味無いだろう? 『好きでした』 なんてもう、過去形にしちまうなよナ…」
口に出したら、今まで我慢していたモノが全部溢れてきて
啼いた。
どうしようもなくなって大声で啼いた。

『体に気を付けて』 今ならまるで別れの言葉に思える。
あれは本当なら、俺がお前を送り出す時に かけてやる言葉だったんじゃないか?
違う違う、俺の目の前でいなくなるのなら、大声で俺の側にいろと、叫んで抱きしめて離したりしない。
「おい、明日も仕事だっていうのに、こんなじゃ目がハレちまって格好わるいじゃないか……。」
それでも溢れる涙は止まらなくて---------。

やっぱりお前も泣いたのだろうか?
少しくらいは俺のことを思って泣いてくれただろうか?
もう、そんなことすら俺にはわからない----------。



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