<ふわふわ ふるる>



 「ちょ、ちょっとロキシー。一体どこへ行くのですか?」
 「ま、いいからいいから」
そう言ってロキシーはエルンストを研究院の外へと連れ出した。
まだ仕事が残っているからと迷惑そうにしているエルンストの手を引きながら
少し早歩きでどんどんと進んで行く。
こんな強引なところは出会った頃と少しも変わらない。
長い間一緒に居ながらも彼という人間は不可解な行動ばかり起こす。
でも……それを不快に感じないのはどうしてなのだろう?
色々考え込んでしまう悪いクセが始まってしまっているエルンストをよそに
当の本人は鼻歌なんて口ずさみながら楽しそうに歩いている。
 「ロキシー、いい加減にして下さい。一体どこまで行こうというのですか?!」
はっと気が付いてまた抗議の声を上げる。
それを聞いているのかどうかよくわからない様子で
ロキシーはいきなり立ち止まると、上の方を見上げた。
 「ほら、着いたぞ。綺麗な桜だろう?」
そう言われて視線を上に向けると、そこには見事な桜の大樹があった。
周りを見ずに歩いてきたので今まで気が付かなかったが、
そこは研究院から少し離れたところにある大きな公園の外れのようだ。
 「こんな所まで来ていただなんて……」
 「まぁまぁ、折角来たんだからのんびりするのも悪く無いだろ?」
呆れているエルンストをよそに、ロキシーは喜々としながら
持ってきた鞄の中からビニールシートを取り出して敷きだした。
そして次々と鞄の中身をその上に広げていく。
御丁寧に弁当を持参してきたらしい。
 「ふう……、そういう情熱を仕事にも向けて欲しいものですね」
 「なんだよ、俺は仕事は真面目にやってるつもりだぜ。
 人聞きの悪い事言わないでくれよ」
膨れっ面をしながらも手際よく紙コップに入れたお茶を差し出してくれる。
しぶしぶながらもそれを受け取り、一口飲み干すと
ゆっくりと視線を桜へと移した。
花が満開のその大樹は、年に一度の晴れ姿を
誇らし気に披露しているように見えた。
散っていく花びらは少し悲し気だけれど、
それだからこそ儚く美しいのだと思わせる。
ふわふわと舞い降りてくるその動きを見ているうちに
少しだけ心が和やかになれるような気がした。
 「……まぁ、たまにはいいのかもしれませんね。こういうのも」
 「だろ?お前は放っておくと仕事ばっかりしかしないからな。
  そんな事だと息が詰まって苦しくなっちまうぞ」
 「……心配してくれているのですか?」
 「当たり前だろ。俺はいつでもお前が心配だよ。
  こうやって強引にでも引っ張り出すのは俺の仕事みたいなもんかな」
そう言って笑うロキシーの顔が何だか眩しく感じた。
今まで経験のした事のない感情が胸の奥底で生まれたような気がした。
いつも見慣れている顔のはずなのに、どうして?
 「弁当をたんまり作ってきたからな。遠慮せずに食べてくれよ。
  今日はのんびり花見といこう」
きっと桜の中に居るからだ。
こんなに奇妙な気持ちにさせられるのは
幻想的なこの風景に溶け込んでしまっているからだ。
動揺する自分にそう言い聞かせながら普通に振る舞おうと努力する。


でもロキシー、
私にとって貴方とは、一体どういう存在なのでしょうか?



*****END****



人様に頂いてしまった、喜びのロキxエル作品1号
強引なロキシーがイカス♪
恋人未満さんな方々ですが、それでも幸せ〜〜♪
主任!こんな辺境の地から声を大にしてお教えします〜!!
ロキシーはあなたにとって、なくてはならない、たとえて言えば
いないと死んじゃう(笑)空気のような存在でございますぞ〜〜〜♪
はやく気付いてねっ♪

カエル1号さんのサイトチョコレート粉砕工場」はコチラ