<Angel Whisper>



 「う〜〜〜ん………」
随分前からティムカは鏡の前で自分とにらめっこをしている。
両手にはそれぞれ服を持ちつつ。
どうやら今日着る服がなかなか決まらなくて悩んでいるらしい。
 暫くそうしていると、ノックの音が聞こえてサーリアが入ってきた。
先程自分が部屋を出た時とまったく変わらないティムカの様子に苦笑いしてしまう。
 「もう30分もそうしてますよ。陛下は何をお召しになられてもよくお似合いですから大丈夫です。
それに、そんな事をしている間にチャーリー樣がいらしてしまいますよ」
 そう、日頃は着る物に執着したりしないティムカがこんなに悩んでいるのは、あの商人が来るからだ。
いつもニコニコと陽気なあの人が、宇宙一の大企業ウォン財閥の総帥だと聞いた時は驚いたのだが、
その人が我が国王ティムカと恋仲だと知った時はもっと驚いた。
 でも……真面目なティムカに明るいチャーリーはとてもお似合いだとも同時に思った。
何かと障害の多いこの恋を応援したいなんて思ってしまっているサーリアなのであった。
 そんなチャーリーが忙しい日常の合間をぬって二週に一度は白亜宮の惑星を訪れる。
その事を何よりも楽しみにしているティムカだった。
 「そうですよね……う〜〜ん……。やっぱりこっちの白い服にしようかな。うん、よし。これにしよう」
 いつものきらびやかな正装とは違った白の上下の服に決めたらしい。
堅苦しい事の嫌いな彼の趣味に合わせたのだろう。
 日頃常にまとめて帽子の中に入れてしまっている髪の毛を下ろしているその姿は、さながら天使の
様に可愛らしかった。
 恋をすると綺麗になるというのは男女同じなのかもしれない。
そんな事を思いつつティムカを見つめているとまたノックの音が聞こえてきた。
 「陛下。チャーリー樣がお見えになりました。庭園の方でお待ちになられているそうです」
 「兄さま、準備は出来た?早くしないとチャーリーさん帰っちゃうよ」
 「え、本当ですか?!早く行かなくちゃ」
弟のカムランとその教育係のイシュトが吉報を持って訪れた。
その言葉に弾かれるようにしてティムカは部屋を出ていってしまう。
 いつも穏やかな物腰のティムカの慌てた様子に呆然と走っていく後ろ姿を見つめていた三人だったがやがて
サーリアとイシュトはお互いの顔を見合ってくすっと笑い出す。
それを見て、よくわからないながらも一緒にニッコリと笑うカムランの姿があった。



 見慣れた宮殿の廊下を走って行くと、庭園へと抜ける道へと出てきた。
きょろきょろと辺りを見回していると美しい花々に囲まれる見慣れた薄い翡翠色の髪の毛が見えた。
 「チャーリーさん!!」
急いで駆け寄って行くと、ティムカに気付いたチャーリーが嬉しそうにニッコリと笑っている。
 「ティムカちゃん。久しぶりやなぁ〜。なんや、今日はまた一段と可愛らしいな。
  髪の毛下ろしてるせいもあるんかな」
 「え、あ……そ、そうですか?」
素直な褒め言葉に嬉しくて顔が真っ赤になってしまう。
そんな初々しい反応にたまらなくなって、チャーリーはティムカを抱き締める。
 少しビックリした様子だったけれど、暖かい体温に安心してやがてティムカも控えめに背中に腕を絡ませる。
 「でも、こんなに可愛いティムカちゃんを他の人にも見られたかと思うと、ちょっとジェラシーやね」
艶やかな黒髪を撫でながら、チャーリーはいたずらっぽく微笑んでいる。
 「大丈夫ですよ。僕は……チャーリーさんの事だけが好きなんですから」
恥ずかしそうに俯きながらの精一杯の告白。
ああ、なんて俺って幸せ者なんやろう〜とチャーリーは幸せを噛み締めている。
まだ恥ずかしそうにしている可愛い顔を引き寄せて触れるだけの口付けを交わす。
甘やかな唇の感触に蕩けてしまいそうなる。
すぐに離れると、二人顔を見つめ合って嬉しそうに笑い合う。
 「そうそう、ここに来る途中に面白い事があったんや」
 「え、何ですか?」
少し照れてしまったのか、急に話を切り出すチャーリーにティムカもまた、愛おしさと感じられずにはいられない。
 一緒に芝生に座り込んで、何気ない会話を交わしていく。
こんな幸せな日常がいつまでも続けばいいと、
そんな事を思いながら。



         
*****END****




うきゅ〜かわいいティムカちゃんなのです〜♪
タイトルはもともと付けられていなかったので、天使のような
ティムカちゃんを思って「Angel Whisper」(天使のささやき)と
付けさせていただきました。
「虹の記憶」でチャーリーが「ティムカちゃん♪」って呼んで
くれなかったのがちょっと寂しかったんですが、カエルさんが
ラブラブを書いて下さったので許す!チャーリー!!

カエル1号さんのサイトチョコレート粉砕工場」はコチラ